給料から引かれる”所得税”って何?社会人が知っておくべきお金の話

新社会人として初めての給料日。 ワクワクしながら明細を見ると、手取りが思ったより少ない……。 その理由のひとつが「所得税」です。
この記事では、所得税の基本的な仕組みから、なぜ払う必要があるのか、実際にどのように使われているのかをわかりやすく解説します。さらに、所得税に関するちょっとした雑学や節税のヒントも紹介します。
所得税とは?新社会人でも知っておくべき基礎知識
所得税とは、個人が1年間で得た所得(=利益)に対して課される国の税金です。 サラリーマン、自営業、アルバイト、フリーランスなど、形態を問わず所得がある人すべてが対象です。
所得の種類
日本の所得税法では、所得は以下の10種類に分類され、それぞれに課税方法が異なります。
- 給与所得:会社からの給料やボーナス
- 事業所得:自営業やフリーランスの収入
- 配当所得:株式などから得られる配当金
- 利子所得:預金や債券などから得られる利子
- 不動産所得:土地や建物を貸したことによる収入
- 譲渡所得:不動産や株式を売った際の利益
- 一時所得:懸賞金や保険の一時金など
- 雑所得:年金や副業による収入など
- 山林所得:山林の伐採や売却による収入
- 退職所得:退職金
所得税がかかる仕組み
- 1年間(1月1日〜12月31日)に得た収入を把握する
- 所得ごとに必要経費を差し引いて「所得金額」を計算する
- 所得控除(扶養控除、配偶者控除、社会保険料控除、医療費控除など)を適用する
- 残った「課税所得金額」に応じて税率をかけ、税額を算出する
所得税の税率(2025年現在)
日本の所得税は「累進課税制度」を採用しており、所得が増えるほど高い税率が適用されます。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
~1,950,000円 | 5% | 0円 |
~3,300,000円 | 10% | 97,500円 |
~6,950,000円 | 20% | 427,500円 |
~9,000,000円 | 23% | 636,000円 |
~18,000,000円 | 33% | 1,536,000円 |
~40,000,000円 | 40% | 2,796,000円 |
それ以上 | 45% | 4,796,000円 |
この税率は「超過累進課税」と呼ばれ、課税所得の一部ごとに異なる税率が適用されるのが特徴です。
なんで所得税を払わないといけないの?
「自分が働いて稼いだお金なのに、なぜ国に払わないといけないの?」 そんな疑問を持つ人も多いはずです。
でも、税金がなければ、私たちの暮らしは驚くほど不安定になります。
社会の安心と安全を守るため
所得税は、私たちが安心して暮らせる社会の仕組みを支える財源です。
- 子どもたちの教育(公立学校や奨学金)
- 医療制度(国民健康保険、病院の整備)
- 高齢者の年金制度
- 警察、消防、自衛隊といった治安や防災機関
こうしたサービスは、個人だけでは整備も維持もできません。 所得税を通じて「みんなで支え合う」からこそ実現できるのです。
経済の安定と再分配の役割
また、所得税は「富の再分配」の仕組みも担っています。 所得の多い人ほど多く納めることで、社会全体のバランスを整え、 弱い立場にある人々への支援(生活保護や育児支援など)にも役立っています。
インフラと未来への投資
- 道路や鉄道などのインフラ整備
- 未来の科学技術や教育への投資
こうした“今すぐには見えにくいけど将来のためになる”分野にも、所得税が使われています。
「自分のため」にもなっている
「税金は取られるもの」ではなく、「将来、自分も恩恵を受けるもの」。 たとえば、若いうちは払う側でも、年をとれば年金や医療で支えられる側になります。 つまり、所得税は「将来の自分への備え」でもあるのです。
所得税の使い道:実例で見る税金の役割
所得税は、国の歳入の中でも大きな割合を占めています。主な使い道は以下の通り:
1. 社会保障関連費
- 年金、医療、介護といった社会保障制度に使われ、特に高齢化社会における財源の中心です。
- 医療費の一部は国が負担しており、病院の利用料金が抑えられているのもこのおかげです。
- 高齢者の年金支給や介護施設の運営にも所得税が使われています。
2. 教育・子育て支援
- 公立学校の運営費や教師の給料、教科書の無償配布なども税金で賄われています。
- 保育園・幼稚園の整備、育児休業制度や児童手当の支給など、子育て支援策もここに含まれます。
3. 公共事業とインフラ整備
- 道路、橋、上下水道、公共交通機関など、インフラの維持・建設費用にも使われます。
- 防災対策としての堤防や耐震補強工事など、災害に強い社会を作るための投資でもあります。
4. 防衛・治安・外交
- 自衛隊の活動費、災害派遣、装備品の整備など。
- 警察、消防、裁判所などの維持運営費もここに含まれます。
- 外交活動や大使館の運営、日本人の海外保護活動にも使われています。
5. 災害復旧・復興費
- 地震、台風、豪雨などの自然災害後のインフラ復旧や被災者支援金。
- 被災自治体への緊急交付金や、災害用備蓄の確保にも活用されます。
実例:災害時の復旧費
例えば、地震や台風などの災害が起きたとき、すぐに動く自衛隊や復旧作業。 これらも所得税から賄われています。税金がなければ、支援のスピードや規模は大きく制限されるでしょう。
所得税に関するちょっとした雑学
- 日本の所得税制度は、戦後GHQの影響で整備された
- 日本の税率は世界的に見ると中程度
- 所得税には「税額控除」という、払う金額そのものを減らす仕組みもある
所得税がなかったらどうなる?
所得税がなくなったらどうなるか——想像してみましょう。
1. 教育の格差が拡大する
- 公立学校が維持できなくなれば、すべてが私立学校化。
- 授業料が高騰し、教育の機会が「お金持ちの子ども」だけのものに。
2. 医療が「高級サービス」に
- 国民健康保険制度が崩壊し、全額自己負担へ。
- 風邪ひとつで何万円もかかる時代に。
- 急病でも、救急車が有料化される可能性も。
3. 災害への対応力が激減
- 地震や台風の際、国の緊急支援が届かない。
- 被災者への支援金、仮設住宅、復旧作業はすべて自己責任。
4. 治安が悪化する
- 警察や消防が十分に機能せず、トラブルや犯罪が増加。
- 「頼れる公的機関がない」社会に。
5. 高齢者や弱者が置き去りに
- 年金や介護サービスが停止。
- 働けない人や障害を持つ人が経済的に孤立。
結果的にどうなる?
- 「自己責任」が徹底された不安な社会に。
- 一部の裕福層しか安心して暮らせない格差社会の到来。
税金、とくに所得税は、こうした未来を避け、誰もが最低限の安心を持って暮らせる社会を維持するために必要不可欠な仕組みなのです。
新社会人でもできる!ちょっとした節税テク
税金は必要なもの。でも、正しい知識を持てば「合法的に減らす」こともできます。ここでは、特に新社会人でも実践しやすい節税方法を紹介します。
1. ふるさと納税
- 自分が選んだ自治体に寄付し、所得税や住民税から控除が受けられる制度です。
- 実質2,000円の負担で、地域の特産品(お米、肉、果物など)がもらえる人気の制度。
- 控除を受けるには「ワンストップ特例制度」または「確定申告」が必要。
- 年収や家族構成によって上限額が変わるので、事前にシミュレーターで確認しましょう。
2. 医療費控除
- 1年間に自分や家族の医療費が合計10万円(または所得の5%)を超えた場合、超えた分が所得控除になります。
- 対象となる費用には、病院の診察代だけでなく、処方薬、通院交通費(公共交通機関)、市販薬(特定成分含有)も含まれます。
- 控除を受けるには確定申告が必要。領収書やレシートの保管を忘れずに。
3. iDeCo(イデコ)
- 自分で積み立てる私的年金制度。積立金額がそのまま所得控除になります。
- たとえば年間24万円積み立てれば、年収や税率にもよりますが約4〜6万円の節税効果が期待できます。
- 原則60歳まで引き出せないため、長期の資産形成に向いています。
- 加入には口座開設が必要ですが、会社員でも簡単に始められます。
4. NISA・新NISA(少額投資非課税制度)
- 投資によって得られる利益(配当・売却益)に税金がかからない制度。
- 2024年から「新NISA」が開始され、つみたて枠と成長投資枠の併用が可能に。
- iDeCoと違って、いつでも引き出せる自由さが魅力。
- 節税というより「課税されない投資枠」として、将来のための資産形成に向いています。

5. 生命保険料控除
- 生命保険、医療保険、個人年金保険などに加入していると、保険料に応じて所得控除が受けられます。
- 年末調整で申告できるので、保険会社から届く控除証明書は大切に保管しておきましょう。
- 最大12万円(3区分×4万円)の控除が可能です。
6. 通勤費・業務関連の経費(副業の場合)
- 副業をしている人は、必要経費をしっかり記録・証明することで課税所得を減らすことが可能です。
- 通信費、交通費、取材費、消耗品費などが該当。
- 青色申告をすれば、65万円の特別控除も受けられます。
まとめ:納税は「未来を支えるチケット」
所得税は、ただの「お金を取られる仕組み」ではありません。
それは、私たちが暮らす社会を「より良く、安心して生きられる場所にするため」の共同投資です。
自分ひとりでは守れないインフラや教育、医療、福祉。 それらを“みんなで少しずつ出し合って支える”のが、税金です。
納税することで、
- 誰かの命が守られ、
- 子どもたちに教育の機会が与えられ、
- 高齢者や困っている人が安心して暮らせる社会が続いていきます。
つまり、納税は“社会をつなぐ責任ある一歩”なのです。
これから納税を始める新社会人の皆さんも、 「これは社会を支えるチケットなんだ」と思って、誇りを持って支払ってみてください。